近年、健康意識の高い人々の間で「マイクロバイオーム」という言葉が流行っています。しかしこの言葉の本当の意味を正しく理解している人はまだまだ少ないのではないでしょうか。「マイクロバイオーム」について、早速学んでいきましょう。
マイクロバイオーム : 体内のエコシステムを理解する
私たちの身体には、腸だけではなく、あらゆる場所に、数千種類の、数兆個にも及ぶ微生物が棲んでいます。
細菌、真菌、寄生虫、ウイルスなどです。
これらの微生物は、宿主が健康であれば、宿主との間で相互に益をもたらす共生関係を形成します。この関係は非常に重要です。
マイクロバイオームは日々の身体の機能に関する多くの役割を果たしているため、「支持器官」とも呼ばれています。
何兆個もの小さな生物が全身でうごめいている姿を想像すると気持ち悪くなるかもしれませんが、実はこれは非常にすばらしいことなのです。
私たちは一人ひとり、DNAによって決定される独自の微生物ネットワークを持っています。
人が初めて微生物に触れるのは産道を通過する時で、その後は母乳を介してとなりますが、乳児が触れる微生物の種類はそれぞれの母親に依ります。
また、成長するにつれて食生活や環境が変化すると、マイクロバイオーム内の細菌バランスも変化していきます。
相利共生の関係
理科の授業では、宿主とその体内に棲む細菌との関係は、「共生である」と教わります。
しかし「共生」という言葉はマイクロバイオームを正当に言い表していません。細菌がヒッチハイカーのように人体にただ乗りしているような印象を与えます。
したがって、「共生」よりも双方が互いに益を与え合うことを意味する「相利共生の関係」とするのがいいでしょう。
私たちは食べる物によって体内の細菌に安全な環境と栄養を与え、これらの細菌は私たちの身体に多くの健康上のメリットをもたらしてくれます。
私たちの身体は歩く生態系であり、清潔な無菌状態の容器ではなく、シャーレ(科学実験で使用される容器)であるといえます。
しかし 科学や社会は清潔な無菌状態を求めており、結果として私たちは抗生物質を過剰に処方され、抗菌石鹸や除菌剤などを頻繁に使用することにより、しばしば自らの健康をむしばんでいるともいわれています。これは、私たちが把握しておくべき、重要な事実です。
なぜなら私たちの身体とマイクロバイオームとの間には、想定をはるかに超える多くの関係があることが明らかになってきているからです。
マイクロバイオームを意識して腸を健康に(後編)に続く